SPORTS DATA and ARTICLE Home

オールドルーキー・菅野智之を独自採点 メジャー1年目に立ちはだかった「試練」【MLBコラム】

2025/12/27

「勝てる投手」の証明と、パワーベースボールの洗礼

 日本球界が誇る「ミスター・コントロール」菅野智之が、海を渡って迎えた2025年シーズン。SDAA編集部は、その挑戦の軌跡と最終スタッツを分析し、今季の活躍度を「Rank C(及第点)」と評価した。評価が割れるシーズンであったことは間違いない。メジャー1年目にして「2桁勝利(10勝)」を挙げた勝負強さは称賛に値するが、一方で防御率4.64、被本塁打33という数字は、ローテーション投手としては改善が求められる水準だ。チームを勝たせる能力を示した「光」と、打者有利な環境に苦しんだ「影」が混在した一年を振り返る。

【関連】エンゼルス 貢献度ランキング:先発陣の柱、菊池雄星が1位に!チームの象徴トラウトも【2025シーズン振り返り・エンゼルス編】MLBコラム

本記事における評価基準について

 SDAA編集部では、シーズンの投手貢献度を独自の指標に基づき以下の5段階(A〜E)で定義・評価している。

  • Rank A(卓越): リーグを代表する支配力を発揮し、サイ・ヤング賞争いやタイトル獲得に絡む「エース級」の活躍。
  • Rank B(優良): 年間を通してローテーションの柱となり、イニング消化や試合を作る能力でチームに大きく貢献した「主戦級」の働き。
  • Rank C(及第点): ローテーションを守ったものの成績は平均的、あるいは好不調の波があり、次年度へ課題を残した状態。
  • Rank D(課題残): 期待値を下回る成績、または不安定な投球内容でチームへの貢献が限定的だった場合。
  • Rank E(低調): 長期の離脱や深刻な不振により、戦力として機能しなかったシーズン。

称賛すべき「30試合先発」と「2桁勝利」

 まず高く評価すべきは、36歳を迎えるシーズンで環境の変化に適応し、年間を通してローテーションを守り抜いたタフネスさである。30試合先発という数字は、チームが彼に寄せた信頼の証であり、大きな離脱なくマウンドに立ち続けたことは最大の貢献だ。  また、10勝10敗と星を五分に戻してシーズンを終えた点も見逃せない。防御率が4点台後半であっても勝ち星を拾えるのは、要所を締めるゲームメイク能力と、味方打線の援護を呼び込む投球テンポの良さがあってこそ。この「勝ち運」も含めた実力は、メジャーの舞台でも通用することを証明した。

33被弾が物語る「球威」と「スタイル」の課題

 一方で、評価を「Rank B」以上に引き上げられなかった最大の要因は、33本という被本塁打の多さにある。157イニングで33発、すなわち約5イニングに1本のペースでスタンドへ運ばれた計算になる。  日本のボールよりも飛びやすいとされるメジャー球や、パワーヒッターの多い環境に対し、「低めに集めても運ばれる」シーンが散見された。被安打173もイニング数を上回っており、WHIP 1.33という数字が示す通り、常に走者を背負いながらの一発病に悩まされたシーズンだったと言える。奪三振率6.08という数字も、全盛期のような「三振でねじ伏せるスタイル」からのモデルチェンジを余儀なくされていることを示唆している。

命綱となった「制球力」は健在

 苦しい投球内容の中で、菅野を支え続けたのはやはり卓越した制球力だった。与四球36、K/BB(奪三振と与四球の比率)2.94という数字は、メジャーの平均的な先発投手と比較しても優秀な部類に入る。  被安打や被本塁打が多くても試合が壊れなかったのは、無駄な四球で自滅しなかったからに他ならない。「打たせて取る」投球の中で、リスク管理を徹底できたことが、防御率4.64でもイニングを消化できた要因だろう。

総括:生き残りをかけた「モデルチェンジ」の年へ

 総括すると、2025年の菅野智之は「メジャーの先発ローテーション投手として最低限の仕事は果たした」と言える。1年目での2桁勝利は立派な勲章だが、防御率や被弾数の改善なくして来季のポジション安泰はない。  精密なコントロールという武器は通用した。来季は、日米の違いに適応した配球の再構築や、芯を外す投球術にさらなる磨きをかけ、「打たれるが勝てる投手」から「安定して勝てる投手」へと進化を遂げることができるか。ベテラン右腕の真価が問われるのは、2年目の来季となるだろう。

※2025年12月26日現在の情報を元に執筆している (SDAA編集部)

記事をシェアする
関連記事