エンゼルス・菊池雄星の今季活躍を独自評価!鉄腕が示した信頼と、さらなる高みへの課題【MLBコラム】
2025/12/26
本記事における評価基準について
SDAA編集部では、シーズンの投手貢献度を独自の指標に基づき以下の5段階(A〜E)で定義・評価している。
Rank A(卓越): リーグを代表する支配力を発揮し、サイ・ヤング賞争いやタイトル獲得に絡む「エース級」の活躍。
Rank B(優良): 年間を通してローテーションの柱となり、イニング消化や試合を作る能力でチームに大きく貢献した「主戦級」の働き。
Rank C(及第点): ローテーションを守ったものの成績は平均的、あるいは好不調の波があり、次年度へ課題を残した状態。
Rank D(課題残): 期待値を下回る成績、または不安定な投球内容でチームへの貢献が限定的だった場合。
Rank E(低調): 長期の離脱や深刻な不振により、戦力として機能しなかったシーズン。
【関連】村上宗隆、チーム再建の救世主に?ホワイトソックスの現状と未来【MLBコラム】
評価の礎は「チームへの多大な貢献」
2025年シーズン、ロサンゼルス・エンゼルスの一員としてマウンドに立ち続けた菊池雄星に対し、我々SDAA編集部は独自の分析に基づき、今季の活躍度を「Rank B(良)」と評価した。この判定は、メジャー移籍後7年目を迎えた彼が到達した「イニングイーターとしての圧倒的な頼もしさ」を高く評価した結果である。課題は残したものの、シーズンを通して計算できる戦力であり続けた事実は、チームにとって「Aランク」に迫る価値があったと言えるだろう。
勲章と言える「キャリアハイ」のタフネス
まず「Rank B」の最大の根拠となるのが、シーズンを通してローテーションを守り抜いたタフネスさだ。今季記録した33試合登板と178回1/3という投球回数は、メジャー移籍1年目の2019年(32試合、161回2/3)、あるいは好調だった2023年(32試合、167回2/3)をも上回るキャリアハイの数字である。長いシーズンにおいて、一度も離脱することなくマウンドに上がり続けることは投手の最大の勲章の一つであり、その貢献度は計り知れない。防御率3.99という数字も、規定投球回に到達した先発投手として十分に合格点を与えられる水準であり、試合を作る能力の高さを示している。
「Rank A」へ届かなかった「WHIP 1.42」の現実
一方で、最高評価である「Rank A」にあと一歩届かなかった要因は、制球面に生じた課題にある。昨シーズン、アストロズ移籍後の10試合で見せたような支配的な投球と比較すると、今季のスタッツにはやや苦心の跡が見られる。特に惜しまれるのがWHIP(1イニングあたりに出した走者の数)の数値だ。2023年の1.27から今季は1.42となっており、その主因は74個に達した与四球にある。無駄な走者を背負うことで球数が増え、自らを苦しい展開に追い込む場面が散見された点は、来季に向けた明確な改善点と言えるだろう。
奪三振能力と、勝敗を超えた働き
奪三振に関しては174個、奪三振率8.78と、左腕としての魅力である「空振りを奪う力」は健在である。7勝11敗という負け越しの結果については、打線の援護やリリーフ陣との兼ね合いも大きく影響するため、先発投手の責任として過度にマイナス評価すべきではない。むしろ、苦しい展開でも粘り強く試合を作り、ブルペンへの負担を軽減し続けた働きこそが、今季の菊池雄星の真骨頂であった。
総括:不可欠だった「ローテの柱」
総括すると、2025年の菊池雄星は「チームにとって不可欠なローテーションの柱」としての地位を確立したシーズンであった。メジャーの過酷な環境でキャリアハイのイニングを投げ抜いた事実は、彼が積み上げてきた研鑽の証であり、その信頼性は揺るぎない。30代中盤に差し掛かり、このタフネスさに制球の安定感が加われば、再び最高評価を狙えるポテンシャルは十分にある。この「Rank B」は、今季の確かな貢献への賛辞と、来季への期待を込めた評価である。
※2025年12月24日現在の情報を元に執筆している (SDAA編集部)