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ダイヤモンドバックス戦に先発し、6回無失点で12勝目を挙げたドジャース・山本=フェニックス(共同)

ダイヤモンドバックス戦に先発し、6回無失点で12勝目を挙げたドジャース・山本=フェニックス(共同)

【山本由伸】”ある球種”を増やしてゴロ率増加、MLB2年目の飛躍をデータで読み解く

2025/10/28

 ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸が、メジャー2年目にして真のエース像を確立しつつある。1年目の2024年シーズンでは防御率3.00、7勝2敗という安定した成績を残し、MLBでも通用することを証明したが、2年目の2025年はその数字がさらに進化している。今回はデータをもとに山本の成績から読み取れることを解説していく。

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■ 防御率2.49、被打率.183──“打たれない投手”への変貌

 まず注目すべきは防御率の改善だ。2024年の3.00から2.49へと約0.5ポイント下げ、被打率も.229から.183へと大幅に低下。単純に「打たれなくなった」だけでなく、相手打者への対応力が格段に上がったことを示している。MLB1年目は球のキレやテンポで勝負しつつも、メジャー特有のボールとマウンドへの慣れに苦しむ場面があった。しかし2年目の今季は、その適応を完全に果たし、ゾーンの使い方やカウントの組み立てがより立体的になっている。

■ 奪三振率10.4台をキープ、安定した支配力

 奪三振率「(奪三振数×9)÷(投球回数)」は10.50から10.42と、昨年からほぼ同水準を維持。9イニング投げたら毎回必ず1三振以上を奪う計算だ。投球回は90.0から173.2へと倍増しており、長いシーズンを離脱することなく先発ローテーションを支えた。
 単純に投げるイニングが増えればスタッツのばらつきが出やすいものだが、山本はその中でも安定した三振力とキレを保ち続け、年間を通して試合を支配する投手へと進化した。

■ 与四球増と球種別の投球割合

 一方で、与四球は22から59へと増加。制球難というより、ゾーン外の誘い球を効果的に使うピッチングスタイルに変わったと考えられる。次に球種別の投球割合を昨年と比較する。Baseball Savant(MLB公式Statcastデータ)によると、昨年から下記の変化が見られる。

ストレート(フォーシーム):40.5%→35.6%、スプリット24.2%→25.4%、カーブ:23.1%→17.6%、カットボール:6.1%→11.0%、シンカー:2.8%→7.5% 

 カットボールやシンカーを投げる割合が増えて、ストレート(フォーシーム)とカーブの割合が減っていることがわかる。カットボールで左打者の内角を攻めたり、シンカーでゴロを誘発させたりする狙いがあると考えられる。そのことはゴロ率(GR%)の増加からも読み取れる。ゴロ率は昨年の48.3%から53.7%になり、ボールを低めに集め、打たせて取る割合が増えている。
 2025年の山本は、速球とスプリットの見せ方に緩急をつけ、意図的に“ボール球で勝負”する場面が増えている。結果として、リスクを取ってでも打者を抑え込むスタイルが、数字にも表れている。

(出典:MLB.com / Baseball Savant)
データ出典: MLB Advanced Media, Baseball Savant / Statcast

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■ 「メジャー対応」から「メジャーを制する」へ

 数字が語るのは、山本由伸がMLBの環境に「順応した」だけでなく、「自分のピッチングを取り戻した」2年目だということだ。
 防御率2点台前半、被打率.183――。もはや相手が誰であれ、ゲームを支配できる投手に成長した。
 異国の地でわずか2年。山本は今、ドジャースのマウンドで新たな物語を刻み続けている。

※2025年10月14日現在の成績
(SDAA編集部)

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