今永昇太の苦悩と躍進、カブス2年間の全貌―「投げる哲学者」が辿り着いた境地【MLBコラム】
2025/12/29
今永は、鮮烈な15勝デビューから一転、数字を落とした2年目――。 しかし、防御率悪化の裏には、意外な「進化」のデータが隠されていた。 被本塁打が増えてもなお、メジャー屈指の安定感を誇る理由はどこにあるのか? データで紐解く「投げる哲学者」の真価と、たどり着いた新たな境地。
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衝撃の1年目:メジャーを席巻した「昇り龍」の如き快進撃(2024年)
2024年シーズン、今永が残した数字はまさに驚異的であった。15勝3敗、防御率2.91、勝率.833という成績は、リーグトップクラスのエースに比肩する。
特筆すべきは、その圧倒的な支配力だ。173.1イニングを投げ、奪三振数はイニング数を上回る174を記録。奪三振率9.03という数字が示す通り、勝負どころで三振を奪える能力がメジャーの強打者相手にも遺憾なく発揮された。また、与四球わずか28という緻密な制球力も、大崩れしない安定感の源泉となった。この年、今永は「投げる哲学者」として、そのクレバーな投球術で全米にその名を轟かせたのである。
試練の2年目:被弾との戦いの中で見せたエースの矜持(2025年)
迎えた2025年シーズン、今永は新たな壁に直面することとなった。防御率は3.73へと上昇し、勝利数も9勝(8敗)と1年目に比べれば落ち着いた数字となっている。
データの詳細を見ると、1年目との最大の違いは「一発」への対応にある。投球回が144.2イニングと前年より減少しているにもかかわらず、被本塁打は27本から31本へと増加した。奪三振率も7.28まで低下しており、メジャーの打者たちが今永の独特な軌道を描くストレートや変化球に慣れ、アジャストしてきたことが伺える。
しかし、特筆すべきは被打率の推移だ。2024年の.225に対し、2025年は.218とむしろ向上している。つまり、走者を出すこと自体は前年以上に抑え込んでいるのだ。ソロ本塁打など単発の失点に泣く場面は増えたものの、WHIP(1イニングあたりの許走者数)で見れば、依然として球界屈指の安定感を維持している。
総括:2年間の進化と今後の展望
今永昇太のこの2年間を振り返ると、極めて高いレベルでの安定感が浮き彫りになる。
最大の武器は、その驚異的な制球力だ。2年間で合計300イニング以上を投げながら、与四球はわずか54。自滅して試合を壊すことがほとんどない点は、監督にとってこれ以上ない信頼の証となっている。また、2025年に奪三振率が低下しながらも被打率を抑え込んだことは、三振に頼らずとも「打たせて取る」投球へのシフト、あるいはより細かな出し入れで打者を翻弄する術を身につけつつある証左とも言える。
今後の課題は、やはり被本塁打の抑制に尽きるだろう。2025年は防御率が3点台後半に後退したが、これは失点の多くが本塁打によるものである。この「被弾癖」をいかに制御し、2024年のような圧倒的な勝負強さを取り戻せるか。
30代を迎え、円熟味を増す今永昇太。2年間の経験を糧に、カブスのエースとしてさらなる高みを目指す彼の投球から、今後も目が離せない。
※2025年12月27日現在の情報を元に執筆している (SDAA編集部)